初めての朝

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   ――――――  私が急いで帰らなければいけないのにはいくつか理由がある。  12月の真冬の季節。  いくらコートを羽織っていたとしても、この寒い中早朝から帰りたい訳じゃない。  今でも実家にいる私。  心配こそするけれど、両親は私が連絡さえすれば外泊することもうるさく言わなくなった。  特に20代後半に入ってからは。  外泊如き、うるさく言ってるうちに婚期を逃したらどうするのだ? とでも思っているのだろうか……  そりゃあ――外泊先も女の子の家ばかりで、男性の話すら何年も聞かなければ、自然とそうなるのかも知れないけれど。  ガラガラ  「タダイマ」  [高木]と表札の掲げられた玄関の扉を静かに開けて、小さく帰宅を告げながら靴を脱いで家に入った。  我が家は、ごく普通の一般家庭で。  家の風貌はというと――サ○エさんの家を想像してもらえたら……と思う。  そこに両親と、2歳下の弟と私とそして社長が暮らしている。
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