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社長は迷い無く近づいて行く。
何も恐れず、どんな困難も信念で払い除けてきた男だ。
解決出来ない問題など存在するはずもないと思っていた。
「…これが、俺の子か?」
一見すると普通の健康そうな新生児が保育器の中で、気持ち良さそうに眠っている。時折手足がモロー反射で跳ねるように動く。
「何か問題があるのか?」
産まれたばかりの自分の子を見つめたまま、背中越しに問い詰める。医者はゆっくりと近づいて来た。
「―…新生児の中には脂肪の塊が手の部分に突出して、6本目の指のように見える子が時たま産まれます」
社長は即座に子供の指を数えた。両手指ともちゃんと5本しかない。
「そのような場合、ご両親の判断で切除したりもするのですが…」
「何だ?ちゃんと指は5本だぞ。何が言いたいんだ?」
医者は保育器のカバーを開き、丁寧に赤ん坊を抱き上げた。
「ご覧下さい。お子様はそれが肩の所に在りまして…」
社長は絶句した。肩にあるそれは、脂肪が突出しているというよりはむしろ…
何かがはえて来ている様に見える。
そしてこの様な時であっても社長の判断は早く迷いもなかった。
「切除を…たのむ」
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