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走る。ただひたすらにその獣を追い掛ける。
「ちょっ…頼むからっ……返して!」
「……」
走りながらもチラッと後ろを向いてくれたが、まるで着いてくんなオーラを発しているようで、ちょっとイラッとした。
「それっ、私の夕ご飯だからぁあ!!」
その叫びを合図に、獣のスピードが上がった。
今までの普通の道よりも細めの路地に入り、軽やかに走っていく。
人間も通れないことはないが、走るのは無理だ。
「……」
今の私は半分キレている。だからこそ、冷静に思考を巡らせることができる。
この場を突破し、魚を…取り返す。
当たりを見回すと電信柱があり、周りの建物はそれぞれギリギリまで密接して建てられ、屋根は全部地面と平行だ。
私は傍にある電信柱を登り、屋根に飛び移った。その時、私が入らなかった路地の向こう側で、獣が悠々と歩いているのを確認した。
私は、ニヤリと笑った。
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