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「ふんふふーん」
鼻歌を歌いながら、この後どのようにしてホテル街…
失敬、どのように遊ぶか煙草の紫煙をくゆらせながら思案する。
カウンターにはワイシャツ姿の黒髪オールバックで、40半ば程の男性マスター、ほの暗い店の雰囲気はまるで密談をしてくださいと言わんばかりである。
ところどころに、レトロなライトスタンドが立っており、一組みの男女はカウンター席でイチャイチャしている。
「ちっ、見せつけやがって…」
俺は窓際近くのテーブル席に座る。
小一時間たった頃か、ドアの鈴が鳴り、目当ての女性が入ってきた。
先ほどの華やかなドレスは着ておらず、ピンクのTシャツにホットパンツ姿である。
「ふぉおお、プライベートモード最高。」
そんな言葉は無視して、アキは赤ワインを注文すると、ゆっくりと俺の前の席に腰を下ろした。
「なんで、アフターしてくれたの??」
素直に聞く俺に、眉根を寄せ真剣な表情で口を開く。
「最初に言っとくけど、仕事じゃないから普段通り話すよ。」
「あんた、黒い玉が何なのかホントに知らないの??」
「えっ!?」
ドエスっぷりな話し方に驚きながらも耳を傾ける。
「ホントに知らないのね。」
煙草に火をつけながら、黒い瞳で俺をにらみつけるように視線をぶつける。
「…いい…ドエスなアキたんも好き!!」
「次アキたん言ったら殺すよ??」
彼女の背後に般若の顔が浮かび上がる。
顔を引き攣らせながらも、素早く何度も頷く…
そして誓った、彼女を“怒らせる”事はしないでおこうと。
「まぁ、いいわ。」
「で、アキちゃんは…」
「アキにして」
言葉を被せるように言い放つ。
少しの間静寂が生まれるが、気にせず聞くことにした。
「で、アキは何か知ってるの??」
「知らないわ、でも…」
「なんでやねんっ!!!」
思わずつっこむ俺に強烈なビンタを叩きこむ。
「次話を折っても殺す。」
「ひっ」
頬に真っ赤な紅葉を咲かせながらも、高速で頷く。
それに満足したのか、ゆっくりと彼女は口を開き始める。
「ただ“それ”を捨てる事は出来ない。」
顔を険しくさせながら続ける…
「私は何度も捨てようとした、いや捨てたわ!!」
「どういうこと??」
「それは、戻ってくるの必ず。」
「朝起きると手のひらに転がってるの。」
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