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「…ただいま」
鍵が開いていた。どうしよう、真利がいる。
「葉澄…!」
今はどっちの真利だ?、目が霞んで見えない。今更どっちでもいいや、こんな姿でどうしようもないのだから。
「………階段から落ちちゃって」
無理な笑顔を作る。吐くだけ嘘を吐いておこう。何もしないよりはマシかもしれない。
「俺のせいだよね」
だけど真利は私の嘘を咎めようとはしない。それをもせずに私を抱きしめた。…今は優しい君が居る。
「真利」
「二人に聞いた。葉澄が、」
「言わないで」
私の手で彼の口を塞ぐ事は出来なかった、だから変わりに彼の背中に自分の手を回した。
「…葉澄」
「真利のせいじゃないよ、私が弱いからいけないの」
「っごめん、」
「真利」
泣かないで、私のために泣かないで。ううん、私のせいで泣かないで。
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