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「野薔薇!!」
野薔薇が落ちたとき一番に走ってプールに飛び込んだのは椿姫だった。
こっそり追跡していたことも忘れて椿姫は無我夢中でプールの水を掻く。
水槽はゆうに二十メートルほどの深さがあり、そこまで息を続かせようとする方が難しい。
水槽の中では野薔薇がゆっくりと沈んでいく最中だった。
底に着くまでに野薔薇の腕をつかみお姫様抱っこをすると全力で水面を目指す。
水が服に纏わりついて重かったし、息もギリギリで目の前が霞んだ。
それでも野薔薇を愛するが故に水面の光を目指して椿姫はばた足を繰り返す。
春だから水は刺すように冷たくて、椿姫の動きを鈍らせた。
でも椿姫は生きたかった。
二人で生きたいと願った。
ざぱぁ。
「ぷはっ」
わぁぁぁぁ!!
椿姫が顔を出すと、全ての人が歓声を上げた。
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