迷い子

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小さい頃、俺は俺が嫌いだった。 父さんが死んで、俺は泣けなかった。 母さんもお兄ちゃんもあんなに泣いているのに、幼い自分には『死』は理解できなかった。 だから俺はお葬式を抜け出して独りで黒い服のまま歩いていた。 あの薔薇がきっと俺に教えてくれるような気がして…。 お葬式の式場が遠かったから、俺は何度も声をかけられた。 「お嬢ちゃん、独り?」 「うん、独りだよ」 「パパとママは?」 「父さんは死んじゃって、母さんはずっと泣いてる」 そんな風に、俺は道行く人々に好奇の眼差しを向けられながら歩いた。 「お嬢ちゃん、お菓子があるんだけど要らない?」 そう尋ねられたのは薔薇が咲いているあの広場の近くに来たときだった。 「要らない」 俺は素気なく断る。 ガシッ。
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