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「………見つけちゃいましたね……」
その声は椿姫のものだ。
「誰……この人?」
柄にもなく声が震えている。
「『紅 野薔薇』
俺の母さんです」
『紅 野薔薇』?
俺の母さん?
「母さんは俺を産んだ後眠っているんです。
ずっと、ずうっと。
紅い眼をした綺麗で幼い人だったと、父さんはよく言っていました」
俺はぞわりとした。
淡々と語られる事実はとても重くて、椿姫が壊れているんだと思った。
俺は走って、壇上から椿姫目掛けてダイブした。
瞳を紅に変えるのを忘れずに。
案の定、椿姫は受け止めきれずに後ろに倒れた。
ぎゅうっと抱きついてくる俺を不思議そうに眺めている。
「大丈夫……」
俺は誰とも無しに呟いた。
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