酒井

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D「まさよし?」 D「泣いてんの?」 泣いてない… そっとしてて…  【愛してない】  D「どうし…」 M「触らないでッ!!」 思わず手を弾いた。 一瞬だけ背中に伝わったその温もりが、気持ち悪いくらい温かかったから。 やめて… M「もう嫌だよ… お兄ちゃん。」 息を呑む音。 それ以外 あぁ… 怖いくらい… 静かすぎる。 D「俺は… お前が」 M「やだ!!」 俺は耳を塞いだ。 ぶんぶんと頭を振る。 M「聞きたくない… そんな言葉、」 あぁ… こんなにも、 大好き なのに… M「俺だって… お兄ちゃんのコト… でも、 違う… 違うのぉ………」 井本さんや菊地や森木やむぅちゃん。 たくさん好きな人がいるけど。 D「…やっぱり、俺じゃ嫌?」 M「―――っ!!!!」 ぞくんっ、と。 心臓がどす黒い音をたてた。 大切な人の悲しそうな声。 違う… 違うの。 怖いの……… D「ごめんな… まさよし、」 M「やめてッ…」 謝らないで、謝らないで… 悪いのは俺、全部俺、 俺らの関係をメチャクチャにしたのも、 その純粋な心を深く傷つけたのも、 昔みたいにああやって明かるく笑ってくれなくなったのも、 全部俺、俺のせい。 違う、謝らないで… M「お兄…ちゃん…」 D「…まさよし?」 M「違うの… ほんとは、」 怖かった。 捨てられるのが。 俺は色んな人に 「好き」って言うから。 実は違う人が好きなんじゃないかって 思わせぶりなコトしちゃうから。 お兄ちゃんに 冷たくあたっちゃうから。 本当に好きなのは お兄ちゃんなのに。 お兄ちゃん だけなのに… M「だから… だから…」 D「まさよし…」 お願い。 抱きしめて 離さないで 目を見て 囁いて もう……… M「―――っう?」 急に… 体全体が熱くなった。 手を引かれて、何かに囲われて… あぁ、そうか。 抱きしめてくれて る。 一番大好きな人が。 俺のために、 M「泣いてる…の?」 泣いてくれてる。 D「バーカ、言わなきゃわかんねぇだロ。 大好きだよ、お前のコト、お前が思ってるよりも………」 その声は若干震えていて それでいて すごく優しかった。 それだけで… 充分だよ。 M「お願い… キスして。」 ――――― Acid Black Cherryの「愛してない」
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