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誰か、特に菊丸辺りに見つかりでもしたら、男子テニス部の方へ引っ張っていかれそうだ。わざわざ男子からは死角になる位置にカゴを置くようにまでしたのに。
「あ!」
「うわ」
上は顔を輝かせた菊丸。
下は正反対の顔をした初佳のものだ。
なんで、よりにもよって本当に菊丸が現れるのだろうか。
「どーしたの、初佳ちゃん」
「菊丸先輩こそ、練習はもう始まってるんじゃないですか?」
「にゃははっ。ちょっと先生に。…じゃなくて、せっかく来たんだから見ていってよ。不二も喜ぶって絶対っ」
有無を言わせず、がしっと菊丸は初佳の腕をホールドした。
「ちょっ、待って!菊丸っ」
にこにこと初佳の腕を引っ張る菊丸と、その菊丸に騒ぐ初佳。二人に男子女子問わずテニス部員が注目し始める。起こるざわめきにあのジャージを着た面々が気付くのには、それほど時間はかからなかった。
まず大石が気付き、目を丸くする。乾が眼鏡を指で押し上げ、桃城と河村が同じようにあんぐりと口を開けた。海堂、越前はちらりと見て視線を逸らし、またすぐに注目する。
初佳はテニスには関わらないが、青学レギュラー陣とは親しい。皆、初佳がテニスに関わらないことを知っている。
「あれー?不二は?」
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