彼女がコートに立つ理由

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 菊丸の首根っこを引っつかんでガクガク揺さぶりたい衝動を、初佳はなんとか抑えた。 「ふぅん…。もう一度聞くけど、嫌がる初佳を無理矢理連れてきたのかな?」  不二は笑っている。にっこりと、それはもう完璧に笑っている。なのに、いや、だから周りの体感温度はだだ下がりだ。 「え?いや、あの…」  真ん前で笑顔(オプション付き)を受ける菊丸は冷や汗を流す。  自業自得ながらもあの冷気を浴びせられている菊丸に向かう合掌。だが助けようとする者はいない(とばっちりが怖い)  不二が暴走する原因が初佳なら、抑えられるのも初佳だ。十分理解している初佳はため息をついた。 「不二先輩、そろそろ止めてください」 「初佳、周助でいいよ?」  ぴたりと不二からの冷気が消える。代わりに初佳から同質の空気が流れ出した。にっこりと綺麗な微笑みを応酬しつつ迷惑な空気を振り撒く二人は、たしかに似た者同士だ。 「フジセンパイ?」 「いつもは先輩なんて呼ばないじゃないか」 「TPOに合わせているだけです。とっとと練習始めたらいかがですか?」
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