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抑えたってか2乗になってないか―…?
環境に優しく人には厳しい天然クーラーに凍える面々をよそに、乾は何故かメモしている。
「…でないと、私帰りますよ」
ふいに温度が上昇した。
「見て、いくの?」
「5分だけですからね」
踵を返して初佳はコートの外に出る。集まっていた部員達がさっと散った。
そのまま帰ってしまうかと皆思ったが、初佳は少し離れた木にもたれ掛かりコートを見ている。口元を緩めた不二が練習を始める合図として手を挙げた。
不二とスピードが遅いラリーを続けている大石が、ふと思い出したように口を開く。
「そういえば不二、もう視力はいいのか?」
先日の関東大会決勝の立海戦、不二は試合中にテニスボールを頭に受けたのだ。だが不二は視力が急激に低下した状態で、気配だけを頼りに立海の2年エースに勝利するという信じられない結果を出した。
「うん、問題ないよ。ありがとう」
「気分が悪くなったり、立ちくらみがあったりは?側頭部にあのボールが当たったんだから」
心配性だなあ、と不二は笑った。さすが青学テニス部のお母さん。
―…と、コートと外を隔てるフェンスが、ガシャンと鳴る。
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