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絶好の勝負日和―――…なんて不二は目を細めつつ、雲が浮かぶ空を見上げた。
いつの間にか対決は1イベントに格上げされ、練習は小休止。部員達が見守る中、その原因がラケットを持ってコートに足を踏み入れた。
てっきりジャージ姿だと思ったのだが、初佳が着ていたのはテニスウェアだった。いつも流している髪は後ろで束ねており、本気であることがみてとれた。
「似合ってるよ、初佳」
「それはどうも」
不満げなところを見るに、断り切れず女子部員に着せられたのだろう。ベースが水色で、白と緑のラインが入ったそれはかわいらしい。
「僕が負けたら病院だよね?なら…」
にこにこと不二がいうと、初佳は眉を寄せた。少し考えるそぶりを見せ、不二は小首を傾げる。
「僕が勝ったらマネージャー「になれとか言ったら別れるからね」
不二の言葉に被せてきっぱりと初佳は言った。予想していた不二は、ただ笑う。
「試合、見にくるっていうのもダメなんだろうね」
ただ言ってみただけ、という言い方だった。表情は優しく、あやすようだ。
そうやって、不二は初佳を甘やかす。本当に嫌なことや踏み込まれたくない領域をわかって、その直前で止まって初佳から動くのを待つのだ。
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