彼女がコートに立つ理由

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 回転をかけないラリーが続く。不二が得意とするカウンターの威力を抑えるためか、初佳は攻勢にでない。  様子を見るように、不二の球に速度と回転が乗った。  バシュッと返る球。打った後初佳がラケットを構えないのは、不二の隣をカウンター球が抜けたからだ。 「40-0…」  手を抜いているとはいえ余りにも鮮やか過ぎる。  不二は訝しげに、目を合わせようとしない少女を見遣った。  サーブは手慣れており、返ってくる球は重い。テニス嫌いが一朝一夕にできることではない。 「初佳、君は…」 「……次で、終わりだからね」  どうして、泣きそうな顔で言うのだろうか?  グリップを握り直し、ボールを一度にぎりしめ、初佳はサーブの位置へ立つ。  上がる球。初佳がラケットを振りかぶる。足がコートから離れ、一気に解き放たれた力に応えた球が回転を纏って不二のコートへ吸い込まれる。 「っな…!」  その球が、不二の肩を掠めた。 「つ、ツイストサーブぅ…?」  菊丸がぽかんとする横で、越前がニヤリと笑う。角度は浅いが、確かにあれは越前リョーマの十八番、ツイストサーブだ。 「まだまだ、だね」 「…ゲーム、瀬川……」  信じられぬまま大石は、勝者の名を上げた。
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