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この辺りで1番大きな病院の脳神経外科、診察室の椅子に不二は座っていた。
ライトが後ろから照らす青っぽいフィルムには、検査の結果が写し出されている。といっても何がどうなのかわからない。
「異常は何もなしです。でも無茶しないようにしましょうね」
「はい。ありがとうございます」
不二が頭を下げるとぱちん、と部屋が明るくなった。時間を確認するとすでに夜の9時をまわっている。本来なら時間外なのだが、にこにこと笑って椅子に座っている若い医師は丁寧に診察してくれた。
「なんだかテニスって危険なんですねぇ。最近テニス関係で診察が多いんですど」
それはアレだろうか。大会前に事故にあったり妊婦さんを助けて怪我した人も含まれているのか。
「ああ、その…まあ」
「うん、とにかく今度からはすぐに診察を受けるようにしてください。なにかあってからじゃ遅いんです」
「はい」
ドアがノックされる。医師が応えると、初佳が入ってきた。
試合後、初佳に部室に放り込まれ、菊丸と大石に着替えさせられ、タクシーに乗せられて病院に来た。予約も何もしていなかったのにすぐに検査を受けられたのは、初佳が話を通していたからだろう。
試合に負ける気はこれっぽっちもなかったという事の証明だ。
初佳は不二からも医師からも同じくらい離れた場所で止まった。
「どう?」
「問題はないですよ。ただ次からはもっと早く来て下さい、とだけ」
「そう。ごめんなさい、もう仕事時間じゃないんでしょう?」
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