第一章

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 小柄で華奢な身体つきに、黒縁の眼鏡をかけている。そしてその双眸は所謂ツリ目というのか、とても鋭い形をしている。目を合わせる度に身体が震えるのはここだけの話だ。  顔立ちも見事なまでに整っている。よくそれなのに出るとこは出ていて、引っ込むところは引っ込んでいるという反則的なプロポーション。女子生徒からの尊敬と男子生徒からの熱い視線を日々雨のように受けている、この学園のアイドル的存在である。本人は自覚していないようだが。  ところで、何故俺だし。確かに机に伏せていて、意識を手放してしまいそうになったのは認めよう。だが、後ろの馬鹿を見てほしい。背もたれに全体重を預け、なんともだらしない顔で爆睡しているではないか。  しかしそんな仕草でさえ不細工にならないあたり、美男子とは役得だ。 「あー、先生。ちょっと後ろの方に注目してほしいんですけど……」  そういって俺は、後ろの馬鹿を指さす。――それが悲劇の始まりだった。
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