序章

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 何かを、引きずり出しているのか?俺はコップから耳を離し、再度中の様子を確認した。  ……それは女性、いや女の子だった。口にタオルを巻かれており、声は聞こえてこない。手足は縄で縛られており、まさに絶体絶命である。だが、その目に涙を浮かばせ、引きずられながらも身をよじって、必死に抵抗していた。  あの女の子は、このままでは間違いなく奴等の慰み者になるだろう。  それは流石に不味い。急いで助けなければな。たがこのまま突っ込んでも―― 「……っ鬱陶しいんだよ!」  ――女の子が殴られた。しかも窓越しに音が聞こえてきそうなくらい、強烈に。それで心が折れたのか、抵抗を止め、目から光がなくなったような気がした。そしてあのゲスどもは気持ちの悪い笑みを浮かべ、女の子の服を脱がし始めた。  ……最早ゆとりもクソもなくなった。こうなれば覚悟を決めるしかないだろう。俺は手元から一枚の札を取り出し、〝魔法〟を施行した。
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