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私、渋谷走子には上野歩という幼なじみがいる。
私と歩は幼稚園の頃からの付き合いで、片時も離れた事が無いんじゃないかというくらいにずっと一緒にいた。
それだけ一緒にいると、好みや趣向、考えている事も何だってわかるようになってくる。他の人達は知らないけど、私達は一心同体程では無いにしろお互いの事が何でもわかった。
歩がメロンが好きで、玉ねぎが嫌いなんて序の口。今、お金を節約しているのは、サマンサのカバンが欲しいからなんて、言われなくても私には常識だわ。実は最近、四十二キロの体重を気にしてる事は少しマイナーよね。マニアックなのは、来週ある私の誕生日には、私の欲しがっていたコーチの財布をプレゼントにくれる事。
私はそれを、知らなかったかの様に驚いて受け取り、その驚いた私を見て歩は喜ぶの。
でも、ほんとは、歩も私が知っていた事を知ってるのよ。でも、そこで歩が喜ぶと私が喜ぶから、歩は喜ぶの。解りやすく説明すると、プレゼントなんて形だけで、お互いがお互いに喜ぶ姿を見たいだけで、私達はお互いの喜ぶ姿を見て嬉しく感じるのよ。私達はそんな関係なの。
ただ、私が最近気になっているのは、私の想いの強さと歩の想いの強さは果たしてイコールなのか・・・ということ。私にとって歩は、人にとって、空気や水のようなもの。あって当然、無いと死んでしまう、そういう存在なの。
そこに気づいたときに、正直私は怖くなった。何か、深い闇に突き落とされた様な怖さを感じた。
仮に私が嫌われたら・・・歩が私から離れていったら・・・、考えるだけで泣いて叫びたくなりそうだった。
どうしても、離れたくない!
私と一緒じゃなきゃ駄目なの!
でも、だからこそ、歩に私をどう思っているかなんて聞けなかった。私は・・・それを聞くのも怖かったの。
そして、私を深い闇のどん底に突き落とすような、そんな出来事が起こって仕舞ったの。
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