ホラーに挑戦

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昔々あるところにお菊という女が居ったそうな。その女はとある呉服屋の家内であった。それはもうたいそう仲睦まじい夫婦だった。しかしそんな夫婦にある事件が起こった。 ある晩お菊が湯から揚がると寝室に夫と見知らぬ女が横たわっていた。お菊は衝撃を受けた。すぐに声をあらげようと思った。しかし少し様子が変だった。夫はピクリとも動かず女はブツブツと何かを唱えているようだった。お菊は気味が悪くなり誰か人を呼ぼうと入ってきた襖(ふすま)に手を伸ばした。すると背後から悪寒が一気に押し寄せた。振り返ると先程まで夫の側にいた女が目の前にいた。顔には爪で引っかいたような傷があった。お菊は恐怖で立っていられなくなりその場に崩れ落ちた。 そんなお菊に女は爪で顔を引っかき回した。痛さより恐さが勝っていたのでお菊は痛みを感じなかった。かくのをやめた女はその場で倒れた。お菊も意識が遠退いていった。 目が覚めると女の姿はなかった。お菊はフラフラとした足つきで夫の傍によった。夫は生気を感じないただの物と化していた。お菊はそれでも夫を揺すり続けた。すると急に胸の辺りを締め付けられた。苦しみ悶えるお菊。その拍子に灯台が倒れたちまち屋敷中に広がった。 それからその夫婦を見た者は居ない。
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