一人目と二人目

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それが悪かったのかねぇ。 ほどなく 女の親御から良縁だという見合いを持ってきた。 いくら良縁でも、娘には男がいる。だから、女は かき口説いたんだね。 男とて手放したいわけじゃあないからねぇ。 これを機会に京の都に帰ってみようと、逃げ出す算段さ。 そんなでも、慌しくやることだけはやっちまってから出たもんだからさ 夜は、もう既にふけていたんでありんすねぇ。 だからって宿を借りる余裕なんかありゃあしませんよぉ。 仕方が無いから、浅草のお堂に二人で行ってさ。 そこで、夜を明かして朝には旅に出ようと思ったんでありんすね。 お堂の縁に袖方敷いて若い二人は、うとうとと……眠った気もしないうちに たちまち朝がやって来た。 明るくなって、男が見れば女はいない。 しかも、着ていた装束や帯が散らかっているじゃあないか。 男は悔しくてねぇ。 彼方此方と、女を探して歩いたさ。 それでも、だぁれも知らないという。
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