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「まぁでも、大丈夫でしょう」 張り詰めた空気がセフィリアの異様に明るく、軽い声で一掃される。 「……すまないな」 緋嫋は謝る。 椎名より自分が行けばいい、彼はそう思っていた。 だが、自分と椎名の立場を入れ替えてどうなる? 椎名に統括隊長である緋嫋の役割が出来るか? ましてや、本部でライフ・アウトに会うのだ。 それが椎名に出来るか? お付きと当人では天と地ほどの差がある。 椎名の代わりに緋嫋が任務に行き、日向の様にやられたらどうなる? 脳を失った手足は動けない。 それだけは避けたかった。 だから緋嫋は謝った。 それをわかっていながら決断を迫られるセフィリアに。 「信じなさいな」 セフィリアはその謝罪を一蹴する。 「あなたが信じる椎名は弱くはない。 椎名の刀、あの意味を思い出しなさい」 「……そう、だったな…」 思い出す。 信じる。 椎名の存在を肯定する。 緋嫋に戸惑いは消えた。 (椎名は大丈夫だ。 あいつなら……) 直後、『本棚』が激しく光を発する。 転送魔術。 必ず帰る、戦場へ。
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