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「果物も魚もよくとれてね、ウチは漁師だったんだけど、親父がよくこんな大きなのを捕ってきたもんだ。」
彼は両腕をいっぱいに広げて、うれしそうに語る。
「美味しそうですね。」
「そりゃあ旨いなんてもんじゃない。ほっぺたが落ちるぜ。いっぺん食べたら、築地の魚なんて食えたもんじゃねえぞ。」
私は彼と築地に何度かいっているし、彼が寿司屋で幾度となく「旨い」を連発するのを聞いているが、そこを指摘するのはやめておいた。
彼はそこでふいに口をつぐみ、一つの大きな石に座ると、また遠くを見るような目つきになり、ゆっくりと口を開いた。
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