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五十年前、この島で起こった出来事は、ひらがなだらけの稚拙な紙芝居に書かれるようなものではなかった。
当時この二尾ヶ島は、地元の人に逆さまに「おに」、つまり「鬼が島」と愛着をもって呼ばれていた。
島といってもそう小さいわけではなく、小さな池もあり、飲み水に困るようなことはなかったという。
当時七歳だった彼は、漁師の一家の末っ子で、兄が二人、姉が一人いた。
彼はその日たまたま池に遊びに行っていた。
池にはカイツブリがいて、それを見に行くのが週に一度の楽しみなのだ。
日が昇ってきたので、少年は昼食を食べるために家へ帰ることにした。
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