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十一月中旬のその日、台風が来たんじゃないかと錯覚するぐらいに、激しい雨と風に見舞われた。
もちろん風も凄くて、傘を差して帰れるような状態じゃなかったのも覚えてる。
結局、傘を手に持ちながら雨に打たれ、風に吹かれながら雷鳴轟く中を走って帰った。
冷たい雨に打たれ、暴風のような風で冷える身体に鞭打ってとにかく走って、家の前まで来て足を止めた。
「…………」
一匹の狐が、我が家の玄関前で雨宿りしていた。
都会というほど建物が多くないけど、田舎というほど自然があるわけじゃないこの街の中で、始めて狐という生き物に出くわした。
しかも我が家の玄関前で雨宿りをして、僕の目をじっと見ている。
警戒しているようには見えない。
「えっと……」
どうすべきかと悩んだ僕は、取り敢えず狐に提案してみた。
「……入る?」
今思えば、これが全ての始まりだったんだよね……。
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