1:始まりの日

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十一月中旬のその日、台風が来たんじゃないかと錯覚するぐらいに、激しい雨と風に見舞われた。 もちろん風も凄くて、傘を差して帰れるような状態じゃなかったのも覚えてる。 結局、傘を手に持ちながら雨に打たれ、風に吹かれながら雷鳴轟く中を走って帰った。 冷たい雨に打たれ、暴風のような風で冷える身体に鞭打ってとにかく走って、家の前まで来て足を止めた。 「…………」 一匹の狐が、我が家の玄関前で雨宿りしていた。 都会というほど建物が多くないけど、田舎というほど自然があるわけじゃないこの街の中で、始めて狐という生き物に出くわした。 しかも我が家の玄関前で雨宿りをして、僕の目をじっと見ている。 警戒しているようには見えない。 「えっと……」 どうすべきかと悩んだ僕は、取り敢えず狐に提案してみた。 「……入る?」 今思えば、これが全ての始まりだったんだよね……。
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