80人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
少女と不良3
咲はまたしても困っていた。
自分は目の前の黒髪の男に話し掛けたハズなのに、男は一切返事をしてくれない。
ただ、こちらをジッと見ている(睨んでいる)だけだ。
「(もしかして……言葉が通じてない…のかも。髪の色…黒いけど日本人じゃないのかな。)」
表情は一切変わらないが、咲は内心困惑しながら目の前の男を見ていた。
するといきなり背後から大声で「おーい!おじょーさん!」と叫ぶ声が聞こえた。
「(……びっくりした。)」
突然の大声に体をびくりと震わせ後ろを振り向くと、そこには真っ赤な髪の笑顔の男が自分の事を見ていた。
「おじょーさんは何でここに居んの?ついでにおじょーさんは団地に一体どーしてほしーの?おにーさんチョー疑問!」
赤髪の男の言葉からすると、目の前の黒髪の男の名前は団地というらしい。
しかし、咲にはそんな事はどうでもよかった。
咲はじっと男の真っ赤な髪の毛を見つめた。
「(髪……真っ赤だ。なのに、日本語喋ってる。)」
咲は相手の言葉を軽くスルーし、赤髪(=外人)であるにもかかわらず男が流暢に日本語を話す事に対し相当な驚きを感じていた。
「(たくさん日本語の勉強したんだろうな。まだちょっと変な所あるけど……でも偉い人だ。)」
咲の脳内では目の前の赤髪の男は苦労の末日本語を体得した努力の人として認識された。
最初のコメントを投稿しよう!