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 うなりはしないが問題文とにらめっこしながら考えていると、背後から視線を感じた。誰かが困って人の背中でも見ているのだろう、護もたまにそうする。別にカンニングをするわけではないが、目の前を見つめて途方に暮れたい時があるのだ。  なお問題とにらめっこしていて、ふと気付いた。視線は背後から感じる。普段の護の席は前から二番目だから、不思議はない。だが、今はテスト中で出席番号順に座り直している。護はちょうど、廊下側から二列目の一番後ろに座っていた。  視線だけで監督教師のいる場所を探すが、探すまでもなく試験開始から教壇に座っている。数学教師である彼は、これ幸いとばかりに昨日のテストの丸付けをしている。立ち上がるはずがない。
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