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「麻里?丸山?」
後ろから声を掛けられて振り向くと、そこには拓様が立っていた。
「拓様!!」
「雨宮様!!」
「やめろよ二人とも。お前たちはもう俺と同等だろ?」
「「ですが……」」
「麻里は蓮と婚約、丸山は三島と婚約。つまり、お前たちは俺と何一つ変わらない」
拓様はそう言って笑った。
「拓様はこれからアメリカですか?」
「おう。商談つけてこいって、矢島家次期当主に言われちゃ断れないだろ」
拓様は苦笑いして私の頭をぽんと叩いた。
「拓様」
「どうした?」
「私を好きになって下さって、ありがとうございました」
拓様は一瞬目を見開いてフッと笑った。
「こちらこそ。お前を好きになって良かったよ」
そう言って歩き出す拓様。
「さようなら。初恋の人……」
そう拓様が言ったのを、私は知らない。
拓様が行かれてから丸山くんとまた空を見上げる。
「大河内様って、どうなったの?」
そう聞くと丸山くんは苦笑いを浮かべた。
「矢島家との契約が切れた事によって倒産寸前だって」
「そうなんだ……」
「自分勝手な事した罰だな」
「なんだか悪いことしちゃったのかな……」
「お前、いい人すぎ」
コツンと丸山くんに頭を叩かれて私はため息をついた。
すると後ろから急に抱き締められた。
「お待たせ」
耳元で聞こえる甘い声。
少し振り返って声の主を見る。
「蓮……」
「人の婚約者に手を出しちゃだめじゃん、麻里」
「え!?出してないよ!?」
「丸山と仲良いのはいいけど、あんまり近付くのは感心しないな」
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