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「なあ」
僕が食べ終えるのを待って、彰久が声を落として僕に言う。
「訊かないのか?」
「なにを?」
「俺がここに来た理由」
「話したいの?」
僕がそう返すと、予想外の返答だったのか、彰久の目が「は?」と聞き返してきた。
「話したいの? 理由とやらを」
「別にそんなわけじゃないけどさ」
「じゃあ話さなくていいよ。話したくなったら言ってくれればいいし。お金も貰ってるから、追い出したりしないし」
彰久はちょっと悩んで、そっかとなにか納得したようだった。
「じゃあ、気が向いたら話すよ」
「ん」
「これからちょっとの間、世話になりやす」
急にかしこまったようすで、あぐらから正座になり頭を下げる。
僕も同じように正座して、頭を下げた。
「わかりやした」
小さな部屋で大人二人が向かいあって正座で頭を下げている光景は、きっと、すごく異様だったと思う。
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