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その日、彰久は結局なにも話さずに眠ってしまった。
無理に話さなくていいと言ったのは僕からだが、理由が知りたくないといえば、嘘になる。
なんで彰久がわざわざ僕を訪ねて来たのか。なぜ数日泊まりたいと言い出したのか。お金はなんなのか。全てが謎で、興味深かった。
ひょっとしたら、旅行なのかもしれないとも考えたが、僕の家の近くで観光名所なんて場所はないし、観れる場所もない。
それに本当に旅行だったら、理由ぐらいすぐ言うだろう。
それが「訊かないのか?」と切り出すぐらいだから、なにかあるのだ。
言いたいような、言いたくないような。そんな変な理由が。
僕の部屋は一人暮らし用の小さな部屋だが、2人が横になるのは充分なほどスペースはある。
布団もあった。
洗ったときに困らないよう、念の為を思って布団は2式用意していたからだ。
ダニなんかが不安だと彰久に言ったが、彼はまったく気にするようすもなく、軽く外ではたくとそのまま横になった。
寝るまで、早かった。
僕が芋を乗っけた皿一枚を洗い終えたら、彰久はもう眠ってしまっていた。
着替えないで、風呂にも入らないで、歯も磨かないで。
彰久がいいなら僕は構わないのだが、若干潔白症の気がある僕は、着替えもしないで眠ることは考えられなかった。
僕はどんなに遅く帰ってきても、必ず風呂に入る。
体を綺麗にするのならシャワーでも良い気がするのだが、浴槽に浸からないとどうにも体がムズムズするのだ。
歯も磨かないとイライラするし、着替えないで寝るぐらいなら、全裸で寝るほうがマシ。
毎日掃除はかかさずするし(そのおかげで彰久が来たとき、慌てずに済んだのだが)、洗濯機も毎日回す。
……だからどうというわけじゃないのだが。
毎日の日課になってしまったように、風呂に入り着替えて歯を磨く。
体が綺麗になってから、彰久を起こさないようにもう1つ布団を敷いて、横になった。
いつも独りで寝るので、僕の隣りから寝息が聞こえて来るのだが、なんだか新しくて、怖かった。
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