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僕と彼女はただの友達……。
僕は真剣な表情をしている彼女に右手を伸ばす。
そしてその頬に触れる。
彼女は目を見張り肩を震わせた。
けれど払い除けたりすることはなく、その瞳は怪訝そうでありながらも僕をまっすぐと見つめていた。
僕は彼女を見つめ返したまま、顔を近づける。
僕のことを友達であり、怖くない、嫌いじゃないと言った彼女へと。
彼女にとって僕は単なる友達に過ぎず、またそれが僕らにふさわしい関係であり距離であるはずだ。
その均衡が僕と彼女の繋がりを保っているのであり、それが傾けばあっという間に全てがきっと崩壊してしまう。
そして今度こそもう元の状態には戻れないかもしれない。
けれど僕は身を乗り出す。
友達という枠を超える行動に出た。
右手に伝わる彼女の頬の熱。
真面目で清純さそのもののようなまっすぐさを持つ彼女の顔が、至近距離にきた。
二重で意外とぱっちりした目にふっくらとした頬。
そして赤い血色の良い柔らかい唇に僕は触れた。
僕は湊有沙にキスしていた。
なぜかは自分でもよくわからなかった。
こんなことをするのは賢明じゃないとわかりきっていたが、どうしようもなく彼女に触れたくなった。
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