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「よう! お前ら相変わらずはえーな」
どこまでもにこやかでフレンドリーな瀬川と適当に会話しているうちに、日暮とその他のメンバーがぞろぞろと駅から出てきた。
毎回、僕と彼女と瀬川以外のメンバーはほぼ一緒に現れる。それは同じ電車に乗り合わせるのか、駅構内で別途待ち合わせているのかなのかはわからないが、今日は彼女もそのメンバーの中に、津田理子の隣にいた。
「湊ちゃん、今日は遅かったね」
「うん……。ちょっとね」
「寝坊でもしちゃった?」
「う、うん。……そんなところよ」
彼女は僕とは一切目を合わさず、瀬川にそう答えた。
言葉尻を濁したり瀬川の問い掛けに動揺してしまっていることから、寝坊だというのは嘘だと僕は思った。
僕のことを避けたかったに違いない。
その証拠に彼女は僕が近くにいる瀬川との会話を早々に切り上げると、津田理子達の方の輪に入っていってしまった。
そんな彼女へ無理に声をかけるわけにも、また日暮達に不審な目を向けられるわけにもいかなかった僕は、どうすることもできないまま歩き出すしかなかった。
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