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「なあなあ。お前、有沙ちゃんと何かあったのか?」
女達が率先して業者のカタログで価格を考慮しながら基本色やらデザインで使う色数を決めてどんなTシャツを作ろうか話し合っている中、離れた場所でそれを眺めていた僕に日暮が近寄ってきた。
「どうしてだい?」
「お前らよそよそしいっていうか露骨に避け合ってるだろう」
「僕は別に彼女のことを避けたりしていない」
淡々と僕は答える。
彼女の方は確かに僕のことを避けまくっている。
しかし僕の方は別に避けてはいない。
ただ彼女が避ける分、距離を置かざるを得ないだけだ。
「……有沙ちゃんに何かしたのか?」
「彼女が何か君に言ったのかい?」
「いや、有沙ちゃんは別に何も言ったりしてないけどさ。有沙ちゃんがお前を避けてるって言うんなら、なんか理由があるんだろう?」
「……」
それに僕は答えられなかった。
ちょっと勢いで衝動的にキスしてしまいましたとはいくら日暮といえども話すわけにはいかなかった。
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