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「お前、有沙ちゃんに何かアタックするならきちんと手順を踏めよ。お前ってなまじ顔が良いから話さなくてもなんとかなるんだろうし、そういう相手ばかりだったんだろうけどよ。有沙ちゃんにはきちんと言葉にして話せよ。何も言わずに行動に出られりゃ有沙ちゃんは戸惑うだけだぜ」
「……」
確かに日暮の言う通りなのかもしれない。
彼女は純粋で男慣れなんてしているはずもなく、貞操観念だって高いだろう。
そんな彼女が少し打ちとけられたからといって突然キスされれば傷つくのも怒るのも無理もないし、当然のことだ。
それにも関わらず全てをすっ飛ばした僕がいけなかったかもしれないことはわかっている。
きちんと何かしら言葉にしてアクションを起こせば良かったかもしれない。
だが上手くいかなかった。
どれくらいの距離を取るか、またどうやってその距離を徐々に詰めていくのか、距離感そのものが掴めなかった。
今まで僕は誰か特定の人間に自分から近づきたいと思ったことなどなかった。才色兼備、何事においても人並み以上で完璧な僕は異性から引く手あまたで向こうから勝手に寄ってきたし、遊ぶ上では相手のことなど必要最低限に尊重すれば良かったし、複雑なことは何もなかった。
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