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「まあ何はともあれ、とりあえずちゃんと謝れよ」
「謝る?」
「有紗ちゃんと気まずいままでいたかったら別にいいけどよ。それが嫌だったらまずはきちんと謝れよな。お前が何かしたんだったらさ。有沙ちゃんは優しいしいい子だけど、そんな有沙ちゃんだって怒る時は怒るだろうし嫌になることだってあると思うぞ」
日暮はそう言った。
「……」
彼女と気まずいままでいいわけがない。
避けられたくない。
距離を置かれたくなんかない。
むしろその逆でもっと近づきたい。
友達以上の関係になりたい。
距離を詰めたい。
それがキスするという衝動に任せた軽率な行動に僕を駆り立て、彼女との間に溝を生んだ。
なんとかその溝を解消したいと思っているものの彼女とはコミュニケーションすら取れないまま。
「謝る、か……。君の言う通りなのかもしれないな。」
僕は彼女に――湊有紗に謝ったことがなかった。
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