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「ふぅ~あち~」
教室に着いた僕は、予備校の宣伝で配っていたうちわをひたすらあおぐ。
「やーっ、ちぃ~今日も可愛いねぇ~」
そう言って抱きついてきたのは由良由来(ゆらゆき)。ここ一年二組の隣の三組の生徒で僕の親友だ。長い黒髪をポニーテールにしていて背は165㎝と僕より高く、スタイルもいい。はっきり言って僕なんかより全然美人だ。
ちなみにあだなは「ゆらゆら」。
「ぎゃあ!あつい!!」
「よいではないか~」
構わず体を抱きつき続けるゆらゆら。
「あ、そいえばね」
ゆらゆらが思い出した様に僕から離れる。助かった。
「ちぃのクラス、なんか転校生が来るみたいだよ~!かっこいいといいね~」
「転校生?男の子なんだ」
この時期に転校生かぁ……
キーンコーン……
朝のチャイムが鳴る。
「うぉう、やばぁい。
じゃまた来るねちぃ~」
ゆらゆらが教室から出ていく。
先生が入ってきた。
白髪交じりのボサボサ頭に、ダルそうな一重瞼の中年オヤジ、達磨寺暦(だるまでらこよみ)。名前だけは一丁前な我らが担任。
通称ダルだ。
「ダル~転校生は~?」
「ダルって呼ぶんじゃねぇよ。
なんだ、もう知ってたのか。つまんね。
んじゃ入ってきて」
ダルが手招きすると、一人の男子生徒が入ってきた。
身長は170㎝位だろうか。ゆるいパーマがかかった黒髪が鼻あたりまである。
耳からは黒いピアスが覗いていて、目をひいた。
何より目立ったのは恐ろしい位の顔立ちの良さ。目はぱっちりとした二重瞼で鼻も高い。薄い唇もそれらを際立たせていた。
ただ一つ、夏だというのにブレザーを着ている点を除けば、非の打ち所がない男子だ。
「不知火紅葉(しらぬいもみじ)。よろしく」
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