非日常への入り口

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廊下に差し込む夕日を横目に職員室へ向かう。 この時間は好きだ。なんとなく心が落ち着く。 職員室へ入るという強制イベントがなければなお良かったのだが。 どうせ私の所属する新聞部関係の話とかだろう。 斉藤先生は新聞部の顧問でもあるからなおさら。 カラカラと音を立てて職員室の戸を開ける。 「失礼します」 入り口付近でキョロキョロしているうちに斉藤先生がやってきて、入り口から一番近い自分のデスクのイスに腰掛けた。ふと見ると、横に小柄な女子生徒が立っていた。 「綾瀬待たせたな」 先生は女子生徒にそう言って、私に向き直った。 「新聞部に新入りだぞ。1Cの綾瀬悠実」 やっぱり新聞部関係の話だった。 ペコリと頭を下げる女子生徒。 「綾瀬です。えっと…、高峰先輩ですよね?」 「え? …ごめん、会った事あったっけ…?」 それなりに記憶を辿ってみたが、どう考えてみても初対面だ。 その様子を見てもどかしかったのか、斉藤先生が割って入ってきた。 「この前の校内新聞だよ。お前の名前書いてあったろ?」 …ああ。言われてみれば。 「高峰の記事に感銘を受けたんだそうだ。良かったな、貴重な読者がいて」 それはどういう意味だ。 「…確か…おうちでできる簡単レシピ…でしたっけ?」 私は先生に訊いたつもりだったが、すかさず綾瀬さんが答えた。 「はい! 写真の撮り方からレシピの内容まで、読者の心をガッシリ掴む記事でした!」 「うーん…なんか照れるなぁ…。」 私の記憶が正しければ、スパニッシュオムレツがどうのこうの書いた気がする。 「あのコーナー、私も担当させてほしいです! …あ、高峰先輩のお邪魔でなければですけど」 「あはは、むしろ大歓迎だよ。よろしくね」
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