非日常への入り口

8/12
前へ
/18ページ
次へ
新入部員の歓迎会的なものも一段落つき、次の校内新聞の内容を決める事になった。 運動部特集、お薦めの本特集、先生の一言コーナー等々… 「じゃあ今度のレシピコーナー、高峰さんと綾瀬さんにやってもらっていいかな?」 部長がニッコリ笑って提案してきた。 レシピコーナーは特にレギュラー記事というわけではなかったのだが、なんだかそういう流れになったらしい。 「わぁ、さっそく担当させてもらえるなんて嬉しいです!」 満面の笑みを見せる綾瀬さん。 「私はバレー部あたりに取材行って記事作るから、こずえちゃんは本の記事と先生へのインタビュー、上田君はいつも通り写真とか記事のレイアウトとかよろしくね。あと、私からも言っておくけど、出てきていない部員にも手伝わせるように。じゃあ今日は解散!」 出てきていない部員に手伝わせる交渉をする時間があったら、自分達でやってしまった方が格段に早く新聞は完成するのだけれども…。各自がそんな事を考えながら、部室を後にした。 さて、どんな料理にしようか。 綾瀬さんと二人、夕日の差し込む廊下を歩きながら考えていた。 「納豆って作ったことあります?」 不意に、綾瀬さんが私の顔を覗き込んで言った。 「…え?」 「納豆ですよ、な っ と う !」 彼女との出会いに違和感を覚えているせいだろうか、私は妙な動揺に身構えていた。 そんな私の心を見透かすように、綾瀬さんは私の様子を伺っているようだった。 差し込む夕日を、その瞳にたたえて。 やたらとぎらつくその瞳で、私の瞳をまっすぐに見据えて。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加