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昼過ぎ。寧々と愛香は既に自室へと戻り、志貴は黙々と翼の部屋の清掃に着手していた。
最後にベッドシーツを交換して、シワがつかないよう綺麗に敷いて清掃は完了。
翼の部屋はモデルルームかと思うような誇り汚れ一つない空間へと変わり、それを眺めて軽く浮かんだ額の汗を拭う志貴。
左腕につけているシックな銀色の腕時計で時刻を確認してようやく時間を把握。
――あいつら昼過ぎには帰ってくるって宣ってたな。
今朝の会話を思い出し、二人が帰ってくる前にぽむ堂全員の昼食を作るべく翼の部屋を後にした。
今頃自室にいる二人も空腹でベッドから起きられなくなっているだろうと軽く頭に思い浮かべながら。
「少し遅くなったから、今日の昼食は僕達二人だけになりそうだね」
柔和な笑みに若干の苦々しげなものを含みながら翼が話す。
「えぇ。昼には帰れると言っていたのに……志貴には悪い事をしました」
翼と同様に僅かに歩く速度を速めているカンナは申し訳なさそうに顔を曇らせて言葉を返した。
それに返すのは言葉ではなく、翼はため息を吐いた。
「志貴の事だから許してはくれるだろうけど……」
寧ろ関心すらしないかな、そう言っていつもの柔和な笑みへと表情を戻す。
それを見たカンナも小さく息を吐き「それもそうですわね」と用意に想像出来る、下宿先の管理人の態度に小さく笑みを浮かべた。
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