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朝五時。
空は徐々に明るんではいるもものまだまだ朝とは呼べない中、とあるアパートの一室ではチャイムが鳴り続けていた。
呼鈴を連打するのは男性。
首筋までの茶髪、黒枠眼鏡。
男性というよりは青年と呼んだ方が正しいのかもしれない。
ピンポンピンポンが鳴り響く中、やがてそのドアからガチャという解錠音が聴こえ扉が開いた。
「……ふぁぁっ、相変わらず早いわねぇ志貴ちゃんは……」
出てきたのは女性。
腰元までの藍色のストレートヘアー。
寝起きだったのか寝間着が着崩れ、豊満な胸が姿を現している。
妖艶な女性のその様な姿を見てしまっては世の男なら本能に忠実になるだろう。
しかし、目の前の青年は違った。
眉一つすら動かさず女性の顔を凝視する。
それに気付いたようで女性は首を傾げた。
「あら、私に見惚れちゃった?」
妖艶な笑みでウインク。
これで落ちない男は男じゃない。
しかしまたしても目の前の青年は違った。
またしても眉一つすら動かさず女性の顔を凝視して、やがて口を開いた。
「飯だ。抱かせないならさっさと来い」
無表情でそれだけ言い、隣の部屋へと入っていった。
しばらく呆然と立ち尽くした女性だが、不意に笑みを浮かべる。
「んもぅっ、おいそれと靡かない志貴ちゃんの男気に痺れる憧れるぅっ!」
その大声は当然、他の住人達の睡眠を妨げたのだった。
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