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彼女は早乙女カンナ。
志貴達とは学年が一つ上で、生徒会長。
容姿端麗、成績優秀、品行方正。
誰に対しても分け隔てなく接し、正義を貫き悪を許さない。
お堅いほどに真面目だがそれを補うかのように献身的であり、教師を含め学園中から絶大な支持を受けている。
学園の理事でもある早乙女グループという大財閥の一人娘であり、「貧乏を経験してみたい」との理由でここアパート《ぽむ堂》に住んでいる。
翼は寧々から視線を外し、困ったように眉を寄せてカンナを見た。
「カンナ、確かに君にとってはどうでもいい話かもしれないが、僕にとって志貴が取られるのは死活問題なんだ」
翼には、容姿故か心の許せる友人が志貴いない。
それに加え彼の家事スキルは皆無。
それ故、志貴は彼にとって色々な意味で生命線なのだ。
カンナは箸の動きを止めて翼を見る。
「それは翼、家事が出来ないのはあなたのせいであり志貴には何も関係ありませんわ」
それに、と話を続けた。
「身の回りの世話が欲しいのならば私が代わりに行いますわ」
「ははっ、それは勘弁しとくよ」
カンナの言葉を翼は息吐かせぬ間で否定した。
案の定カンナは眉間にシワを寄せてため息を吐く。
「もう、あなたはいつもそればかり……。皆様も、もし手伝いが必要ならば私が手伝いますわ」
『間に合ってるから大丈夫』
微笑みながら全員を見渡したカンナに、今度は全員から再び否定された。
「ッ! あ、あなた達という人は……!」
当然怒るだろう。カンナは肩を震わせガツガツとご飯を平らげて足早に部屋を出ていったのだった。
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