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「それでは行ってきますわ」
「昼には帰ってこれると思うから」
そう言って制服に着替えた二人はアパートを後にした。
それを見送り、志貴はアパートの門前で大きく腕を伸ばす。
横を見ればアパートの名前である《ぽむ堂》の表札。
下が三つ部屋、上が三つ部屋の計六部屋だけの小ぢんまりとしたアパート。
八畳和室の1K。家賃は共益費込みで三万八千円。
この辺りでは割りと安い物件ではある。
築年数は自分と同じく今年で十七年。
アパートの名前である《ぽむ堂》の由来は――。
不意に背中に結構な重さがのし掛かってきた。
しかもかなり柔らかい二つの感触。
「何してんだ寧々ビッチ」
「やあねぇ、そんなCGウサギアニメみたいな呼び方されたらお姉さん傷付いちゃうわぁ」
耳元で囁かれる、憂いを帯びた寧々の体に粘り付くような妖艶な声。
そう言う割りには背中の押し付けは止めない。
寧ろ強めた。
だがここまでされても悦ばない志貴には訳があった。
一つは毎日のようにこのレベルのスキンシップが繰り広げられているため。
もう一つは……。
「なら抱かせてから家賃払うか、家賃払ってから抱かせるか選べ」
彼女は入居してからこの二年間、一度も家賃を払っていなかったのだ。
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