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「もぉ、相変わらずいけずねぇ志貴ちゃんは」
文句を言いながら立ち上がり志貴の横に並んで歩く。
「……でも」
突然寧々が立ち止まったため、つられて志貴も立ち止まり彼女を見る。
「だからこそ志貴ちゃん弄りはやめられないのよねぇっ」
至極楽しそうに笑みを浮かべた彼女を志貴は汚らわしいものでも見る目で見ている。
「……お兄ちゃん、寧々お姉ちゃん」
不意に後ろから声が掛かり、揃ってそちらに顔を向けた。
そこにいたのは愛香。
可愛らしく小首を傾げている。
「……ここで、何してるの?」
そう訊ねる愛香に二人は思わず顔を見合わせる。
寧々は笑みを浮かべ、膝に手を着いて腰を曲げて愛香と顔の高さを合わせた。
「それはね、愛香ちゃんももう少し大人になってから分かると思うんだけど……つまりは男女の営――痛っ!」
純粋な少女に毒を盛ろうとした寧々は、兄からのチョップという名の洗礼を受けたのだった。
「あぅぅ、痛いじゃないのよぉ……腫れたら責任取ってもらうわよぉ……」
少し怒っているのだろう。
しかし割りと本気でチョップされて痛かったらしく、頭を両手で押さえながら涙目で言われても迫力はない。
志貴はまるで寧々が見えていないかのように、愛香の手を引いて歩き出した。
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