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志貴、手を引かれる愛香、そして未だに頭を擦る寧々は揃って部屋に入る。
しかし入った部屋は各々の部屋でも、志貴の部屋でもない。
一〇二号室。柊翼の部屋だ。
管理人である志貴はマスターキーを所持しており、誰の部屋にでも入ることが出来る。
無論、性格が破綻している志貴が邪な理由でコレを使うことはないが。
翼の部屋に入ったのには訳があった。
「うわぁっ、相変わらず志貴ちゃん頼み全開な部屋ねぇ……」
部屋を見て引きつった顔で寧々が呟く。
愛香も寧々の意見に賛成らしく、志貴の手を強く握った。
ベッドの上には衣類が散らばり、床やテーブルには雑誌が散乱。
翼は生活スキルがゼロなのだ。
よって部屋は自然とこのような惨状になる。
翼は「えっ? これって汚いのかい?」とまるで現状を把握しておらず、こうして志貴が定期的に清掃に駆り出すのだ。
しかしいくら汚いと言っても、ジュースや食料のゴミが見当たらない。
ゴミ袋の十個や二十個あっても良さそうなものだが、そこは志貴。
翼に自室での飲食を禁止させているのだ。
翼が飲んだり食べたりする時は必ず誰かの部屋で。
これがぽむ堂暗黙の了解である。
翼もこれに了承。寧ろ食材を買う必要がなくなり、逆にコレを重宝しているほどである。
今朝の食事風景も、これが起因しているのだ。
愛香の頭を撫でて手を離し、志貴は翼の部屋の片付けに足を踏み入れたのだった。
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