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瑠華の質問に彼は少し考え込むと、悪戯な笑みを浮かべる。
「さあな…。教えてやんない」
「はあ?」
瑠華はまた面倒くさいことになったと眉間にしわを寄せた。
「俺、こう見えて結構真面目に仕事してんだよ。
なのに、生徒に顔も名前も覚えられてないとか本気で傷つくんだけど…」
どの口がそんなことを言っているのか…。
言葉に見合うような表情すら見せない彼に、瑠華は戸惑いを隠せない。
「真面目って…。どこが?
うちの学校、全面禁煙でしょ? 」
職員室を含め、教師たちは煙草を吸うことができないこの校舎。
喫煙者にとってそれはあまりにも可哀想と休憩時間に自分の車で吸うことのみ黙認されている現状だが、彼はよりによって生徒の前で堂々といかにも美味しそうに煙を吐き出す。
「だよなー。まじ喫煙者にしてみたら地獄だよ…。
昨日まではさ、校舎内の俺のとっておきの場所で吸ってたのに…教頭にばれちまって…」
瑠華の嫌味なんかお構いなしに、彼は話し続けた。
「もういいだろってくらい文句言われて、これからそこで吸うの禁止されて…
もし次見つけたら校長に報告するって…、パワハラだよな、全く…」
「いや…当たり前じゃん。禁止されてんだから…」
学校側に加担して、冷やかな言葉を投げる瑠華に、男はわざと溜め息を吐いて見せる。
「お前…自分には甘いのに人には厳しいな…。
自分の行動ちゃんとしてから人に文句言えって」
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