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「勝負になってるじゃんっ…」
思ってもみない展開に、瑠華は顔を上げ男の方へ身体の向きを変えた。
「え?
そうゆうのないとモチベーション上がんないだろ?」
当然のように笑って見せる彼の態度に、もどかしい気持ちでいっぱいになる瑠華。
「ちょ……マジやめて…お願いだから私に関わらないで」
これまでもそうだった。
なるべく人と深く関わらないように、友達でさえある程度の距離を持って接してきた。
それで良かった。
その距離感でいることが、生きるには都合がいいから…。
でも。この男は人の気持なんかお構いなしにそんな瑠華の中にずかずかと入り込もうとしてくる。
そして…瑠華を困惑させていた。
「もう決まり。あ、お前が負けたら…そうだな……、
その身体でも捧げてもらうかな?」
人の気も知らないで、冗談混じりに顔を近づけようとする彼に、目の前にいるのが担任であることも忘れて瑠華は男を睨みつけ声を荒げる。
「ふざけないで! そんな勝負…絶対やんない。
あんたとももう絶対二人で会ったりしないから。
それと、ここは私が先に見つけた場所なんだから、煙草…他の場所見つけてよね」
投げつけるようにその台詞を吐きだし、瑠華は足早に屋上の出入り口に向かい、振り返りもせずそこを立ち去ってしまう。
残された男は瑠華の後ろ姿を無言で見送り、春風に紛らせ一言だけ呟く。
「全然ふざけてなんかねえんだよ……美崎」
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