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さぼっていたことに加え、自分の通っている高校の教師を知らなかったという今の状況に、すぐにでもこの場所からいなくなりたいと思う瑠華。
「え…っと、ごめん…な…さい」
兎に角、謝ったら勝ち。
根拠のない持論を本気で信じる瑠華は、何よりも先にその台詞を彼に放ち、珍しくしおらしい態度を見せた。
「敬語とか……今さら? 変な奴…っ」
と、そんな瑠華の様子を楽しそうに笑う彼。
きっちりと細身のスーツを着こなし、自然な、でも決して地毛ではないだろう長めの茶色い髪を風になびかせる。
その風に乗って、男物の香水と煙草が混ざり合って香る彼の匂い。
瑠華は不覚にもそんな彼の無邪気な笑顔に一瞬、目を奪われてしまう。
「別に…気にしないからいいよ…」
「え…?」
「敬語。俺に使ってる奴、ほとんどいねえし」
男はそう言って鼻で笑うと、携帯灰皿に煙草を押し付ける。
冷静に考えると、本当に教師なのかと疑いたくなる。
一つは見た目。
もう一つは話し方。
そして…煙草。
「ねえ…名前、何て言うの?」
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