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妻が他界して一年。最初の頃は外食が多かったが、今では家事にも慣れ、外で遣う金は山本との飲み代ぐらいだ。
読みたい本は古本屋で物色するか、図書館を利用するので、大して金は掛からない。
休日の楽しみと言ったら、山本と指す将棋とレンタルビデオで観る懐かしい映画ぐらいだろうか…。
「―あの傘の高さからして、身長は160前後かな」
「…すごい推察力だな」
子供を褒めるかのように、感心した目を向けてやった。
「…でも、なんで、日曜の度にお前ん家の前なんだ?」
「さあな…待ち合わせかな?」
「待ち合わせに、垣根の垣根の曲がり角~♪か?」
山本が下手くそな歌を歌った。
「竹垣の隙間から見える紫陽花を鑑賞してるのかも」
「ま、確かに綺麗だけどな」
紫陽花に顔を向けた山本が納得した。
「あれっ、傘が無い」
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