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その言葉に、咄嗟に垣根を見た。
いつの間にか紫の傘は消えていた。
「フン。待ち合わせの相手が来たらしい」
山本が鼻で嗤った。
「気が付くといつも消えてる」
「幽霊みたいだな。と言う事で、王手っ!」
山本の大きな声に吃驚した俺は、
「チッ。とぼけた顔してババンバン~♪だな?」
と、顔を歪めると、ボサボサの頭を掻いた。
次の休日も、紫の傘は覗いていた。
「な?顔、見に行こうぜ」
突然、指を止めた山本はそう言って、下賤な目を向けた。
「えっ?」
俺は少し躊躇いながらも、腰は浮いていた。
先に玄関に向かったのは俺のほうだった。
音を殺すように硝子戸を開けると、サンダルを履いた足をゆっくりと伸ばした。
亀が首をもたげるように、竹垣の端から覗くと、
無かった!…体が無かった。
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