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「大輝、ひーろーきー起きろや」
叫んでからドアをそーッと開ける。
部屋に入るといかにも小学生らしい雰囲気が漂っている。
「ほら、大輝起きろ」
寝ている大輝の方をゆすって起こす。でも、起きる気配はない。
「大輝、はよ起きやな兄ちゃん置いて行くぞ」
「アカン、一緒に行く!」
と言って飛び起きてくる大輝。
「おし、ほら早よせな学校遅れてしまうで」
う~っとうなりながら一階へ降りてく大輝を見送って、自分の部屋に戻って制服に着替えて降りていく。
いつもの日常だ。
これが幸せってヤツなんだろうとテーブルに続いていくドアを開けながら俺は実感した。
「貴ちゃん。流輝ちゃんと待ち合わせしてるんじゃないのー?」
「あ。ヤバイ! もういかなアカンわ。大輝、今日は俺先行くぞ!」
「え。僕と一緒に行く言ったやんか!」
そういって俺のズボンを引っ張ってダダをこねる大輝にそっと耳打ちをする。
「今度アイスおごったるから今日は堪忍な」
「約束やで?」
「おん。約束」
そういって大輝をなだめて、家を出た。
「行ってくるわー」
そう、何も変わらない日常だ。家を出た後はいつもの待ち合わせ場所に彼女は膨れっ面で待っているだろう。
過去に戻ったことも今は少し頭の片隅において、今ある日常をかみ締めたくなった。そんな今日。
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