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「しゃあないな。貴規には教えたる」
「おっしゃ。さすが新!」
「んならちょっと耳かせや」
そういわれて自分の耳を新のほうに寄せていく。すると耳らへんに痛みが走る。
「痛い痛い! なに、かましとんねん。お前」
「ハッ! 教えやんわ。馬鹿貴規」
そういって俺の耳から手を離す新。
耳が赤くはれた俺を見てさっきから爆笑している。
「ほんま、お前ってヤツわ」
「なんや。やるか?」
そういってファイティングポーズをとる新の後ろに俺は見てはいけないものを見てしまったかもしれない。
「新、やるんやったら」
そういいかけてやめた。というより辞めざるをえなかった。
だって、新の後ろに仁王立ちをした流輝が鬼の形相で俺らを睨んでいた。
「貴規、新君! もう直ぐ全国大会近いんやから、練習真面目にして!」
今にも追いかけてきそうな勢いで流輝はこちらにどんどん近づいてくる。
「なあ、新、一時休戦といこうや」
「そやな、なら逃げろ!」
新の掛け声と共に俺達は一斉に体育館を駆け出していた。
そうして俺達の流輝の生死をかけた鬼ごっこは始まったのである。
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